チョコレートの基本|テンパリングとは?適正温度と失敗しないコツをご紹介
せっかくの美味しいクーベルチュールチョコレートを使っても、テンパリングがうまくいかなければ固まらなかったり、表面が白っぽくツヤのないチョコレートになってしまいます。さらに、テンパリングの失敗は見た目だけでなく、風味や口どけを損なう原因にも。このようにチョコレート作りに欠かせない重要な工程でありながら、多くの方がテンパリングを苦手としています。そこで今回は、テンパリングの基本知識から失敗しないコツまで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
テンパリングとは?
テンパリングとは、溶かしたチョコレートを適切な温度で調整し、カカオバターの結晶を安定した状態に整える作業のことです。型抜きチョコレートやボンボンショコラのコーティングなど、チョコレートを溶かして使う場面では、このテンパリングが仕上がりを左右する重要なポイントになります。
*カカオバターは、カカオ豆からとれる油脂で、チョコレートの重要な原料のひとつ。ココアバターとも呼ばれています。
カカオバターの結晶型
カカオバターは、温度によって6種類の結晶型が存在します。それぞれの結晶型は、融点や安定性が異なり、チョコレートの品質に大きく影響します。最も安定しているのはⅤ型で、美しい光沢とパリッとした食感、滑らかな口どけを持つ理想的な結晶型です。テンパリングとは、このⅤ型結晶を意図的に増やすための温度調整作業ともいえます。
| 結晶型 | 融点(℃) | 安定性 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 17 | 非常に不安定 |
| Ⅱ | 23 | かなり不安定 |
| Ⅲ | 25 | 不安定 |
| Ⅳ | 27 | 不安定 |
| Ⅴ | 33 | 安定 |
| Ⅵ | 36 | 最も安定だが結晶が粗大(ブルーム) |
テンパリングの温度と結晶の変化
テンパリングが、温度調整によってカカオバターを安定した状態に整える作業だとわかったところで、では、その温度変化のあいだにチョコレートの中では何が起きているのでしょうか。ここでは、各温度帯でカカオバターの結晶がどのように変化していくのかを、順を追って見ていきます。
冷却(B):チョコレートの温度を下げ、不安定な結晶(Ⅰ~Ⅳ)を発生させる。
昇温(C):チョコレートの温度を上げ、不安定な結晶を溶かし、安定したV型結晶の核を作る。
凝固(D):V型結晶の核に誘導され、全体がV型結晶に統一される。
テンパリングの温度は、チョコレートの種類によって決まります。ミルクチョコレートやホワイトチョコレートには、カカオバターより融点が低い乳脂が含まれているため、テンパリングの温度がスイートチョコレートに比べて低くなります。
| 融解(A) | 冷却(B) | 昇温(C) | |
|---|---|---|---|
| スイートチョコレート | 50~55℃ | 27~29℃ | 31~32℃ |
| ミルクチョコレート | 40~45℃ | 26~28℃ | 29~30℃ |
| ホワイトチョコレート | 35~40℃ | 23~25℃ | 27~28℃ |
*パッケージにテンパリング温度の記載がある場合は、そちらを参照ください。
*参考:農学博士 河田昌子「お菓子こつの化学」,柴田書店,2015年3月(3版)
テンパリングしないとどうなる?
テンパリングを行わず、ただ溶かして固めただけのチョコレートは、外見上は固まっているように見えても、内部では不安定な結晶が混ざった状態です。「テンパリングあり」と「テンパリングなし」ではどのような違いがあるのか、一覧にまとめました。
| テンパリング あり |
テンパリング なし |
|
|---|---|---|
| 見た目 |
• 表面に美しいツヤのある • 均一で深みのある色 |
• ツヤがなく、マットな見た目 • 表面に白い斑点や筋が現れる(ブルーム) |
| 食感 |
• パリッとした歯切れの良さ • なめらかな口どけ |
• もろく、歯切れが悪い • 口どけが悪く、ザラザラした舌触り |
| 物理的特性 |
• 常温で素早く固まる • 収縮して、型からきれいに外れる |
• 固まりが遅く、ベタつきやすい • 型に張り付き、型から外しにくい |
テンパリングの方法
テンパリングにはいくつかの方法がありますが、ここでは一般的によく使われている水冷法とシード法についてご紹介します。
水冷法
水冷法は、融解・冷却・昇温の手順に沿って、安定した結晶を残す方法です。テンパリングの仕組みを理解しやすく、少量のテンパリングにも適しています。
- 1)刻んだチョコレートボウルに入れ、湯せんに当てて溶かしAの温度まで上げる。
- 2)湯せんから外し、ボウルの底を冷水または氷水にあててBの温度になるまで下げる。
- 3)再び湯せんに当てて、Cの温度になるまで上げる。
フレーク法(シード法)
フレーク法は、溶かしたチョコレートに、細かく刻んだテンパリング済みのチョコを加えて結晶の「種」とし、全体の結晶を揃える方法です。比較的単純な作業ですむため、初心者の方にもおすすめです。
- 1)チョコレートの1/3を細かく刻む。
- 2)残りのチョコレートをボウルに入れ、湯せんに当てて溶かしAの温度にする。
- 3)ボウルを湯煎から外し、刻んだチョコレートを加え、チョコレートをCの温度になるまで下げる。
テンパリングのチェック
テンパリングの作業を終えたら、パレットナイフやカードなどにチョコレートを少量つけて状態をチェックします。
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しばらくおいて、つやよく固まれば成功です。 |
なかなか固まらなかったり、表面が白っぽくなってしまったら失敗です。 |
テンパリングの失敗しないコツ
テンパリングは最初は難しく感じられるかもしれませんが、基本をしっかり押さえることで失敗のリスクを大きく減らすことができます。
製菓用のチョコレートを選ぶ
テンパリングには、カカオバター含有量が高い製菓用チョコレートを使用します。市販の板チョコなど、代用油脂が含まれている場合は、テンパリングがうまくいかないことがあります。
チョコレートの量に気をつける
チョコレートの量が少なすぎると温度変化が速く、テンパリングが安定しません。最低でも200gは用意しておきましょう。
温度管理を徹底する
テンパリングは、わずかな温度差が仕上がりに大きく影響します。慣れないうちは温度計をこまめに確認しながら作業することで、温度の上がりすぎや下がりすぎを防ぐことができます。
水分を絶対に混入させない
チョコレートに水分が入ると、少量でも分離の原因になります。使用する道具はすべてしっかり乾燥させ、湯せんの際は蒸気や水滴がチョコレートに入らないよう注意しましょう。
ゆっくりと均一に混ぜる
チョコレートを混ぜる際は、ボウルの側面や底に固まった部分が残らないよう、全体を均一に混ぜることが大切です。ただし、勢いよく混ぜすぎると空気が入り、気泡の原因になるため注意しましょう。
テンパリング不要のチョコレート
手作りチョコレートに挑戦したいけれど、テンパリングが難しそうで不安という方には、コーティングチョコレートがおすすめです。カカオバターの代わりに代用油脂を使用しているため、風味や味わいはチョコレートに劣りますが、テンパリングの必要がありません。湯煎にかけるだけで、テンパリングしたようなつややかな仕上がりに。
テンパリングに必要な道具
テンパリングを成功させるには、正確な温度が測れる温度計は必須アイテム。また、効率よく作業を進めるためには、チョコレートを溶かすボウルやゴムベラなど、基本的な道具も揃えておきましょう。










