ガレット・デ・ロワの本格レシピ・作り方|シェフから教わるフランス伝統菓子
ガレット・デ・ロワは、キリスト教の公現祭(1月6日)を祝って食べられるフランスの伝統的な焼き菓子。パイのなかにはフェーブと呼ばれる小さな陶器の人形がひとつ隠されていて、切り分けられたパイにフェーブが入っていた人は幸せな1年を過ごすといわれています。フイユタージュ(パイ生地)とアーモンドクリームというシンプルな組み合わせが魅力のガレット・デ・ロワですが、実際に作るとなるとかなり手ごわいお菓子。そこで今回は、パティスリーミラヴェイユの妻鹿シェフにお願いし、作り方をポイントとともに詳しく教えていただきました。シェフのお店のレシピがベースとなっているので必見です。
ガレット・デ・ロワの作り方
ガレット・デ・ロワのフイユタージュ(パイ生地)は、のばす・折る・休ませるを繰り返す手間のかかる作業。ついつい休ませる時間を短縮して次の工程に進みたくなりますが、作業するごとにしっかり休ませることが失敗を防ぐポイントです。そこで、シェフに時間配分をお伺いしたところ、無理なく作業を進めるには3日間に分けて行うのがよいとのこと。まずは、シェフおすすめのタイムテーブルを確認しておきましょう。
シェフおすすめのタイムテーブル
1日目
①デトランプを作る
②バター生地を作る
③クレームダマンドを作る
2日目
④デトランプでバター生地を包む
⑤折り込み作業(3つ折り2回、4つ折り1回)
3日目
⑥折り込み作業つづき(4つ折り1回)
⑦成形
⑧レイエ(模様を描く)
⑨焼成
材料(直径約18cm 1台分)
▶ フイユタージュ(パイ生地)
デトランプとは小麦粉に油脂、塩、水などを加えてまとめた生地のことで、デトランプとバター生地が幾層にも重なったものがフイユタージュ(パイ生地)です。
<デトランプ>
- A メルベイユ(準強力粉) 90g
- A スーパーバイオレット(薄力粉) 66g
- 発酵バター(食塩不使用) 38g
- B 水 60g
- B 塩 3.6g
- B グラニュー糖 3.2g
- B りんご酢 2.8g
<バター生地>
- 発酵バター(食塩不使用) 145g
- メルベイユ(準強力粉) 42g
▶ クレームダマンド(アーモンドクリーム)
- 発酵バター(食塩不使用) 44g
- 粉糖 46g
- C 全卵 23g
- C 卵黄 4g
- サワークリーム 5g
- バニラオイル 0.2g
- D アーモンドパウダー 48g
- D スキムミルク 2g
- D スーパーバイオレット(薄力粉) 6g
- ラム酒 5g
▶ 仕上げ
- 卵黄(塗り卵用) 適量
- 粉糖 適量
▶ その他
- フェーブまたはアーモンド 1個
- 紙の王冠 1枚
使用する道具
粉ふるい、ボール、カード、ゴムベラ、めん棒、泡立て器、パレットナイフ、刷毛、茶こし、ベーキングペーパー、絞り袋、ラップ、カッターナイフ、ペティナイフ
*ガイド用に直径15cmと18cmの型
フイユタージュには、デトランプでバターを包んで折り込むオルディネール(折り込みパイ生地)と、小麦粉を混ぜたバター生地でデトランプを包んで折り込むアンヴェルセ(逆折り込みパイ生地)があります。アンヴェルセは、繊細で軽い食感に仕上がりますが、手に触れる面がバター生地となるため、温度管理と高い技術が必要になります。そこで今回は、配合はアンヴェルセ、折り込み作業はデトランプが外側になるオルディネールで行います。アンヴェルセの配合なので、食感が軽くなるのはもちろんですが、バターには小麦粉が含まれているため生地ものばしやすくなります。このハイブリットなフイユタージュは、まさにいいことずくめ。ぜひ、試してみてください。
作り方
1日目
1日目はデトランプとバター生地、クレームダマンドを作ります。
① デトランプを作る
・Aの材料(小麦粉)とバターは冷蔵庫で冷やしておく。
・Bの材料を合わせ、しっかりと混ぜておく。
1 ボールにふるいにかけたAの材料とバターを入れ、カードで細かく刻む。
*デトランプは、強力粉と薄力粉を使うのが一般的ですが、パイの仕上がりを軽くするために準強力粉と薄力粉を使っています。また、バターを水より先に加えることで、グルテンの形成が抑えられ、生地がさっくりと仕上がります。
2 バターが細かくなったら、手のひらですり合わせサラサラの状態にする。
3 2に準備していたBの材料を加え、カードで生地を押さえるようにして混ぜる。
*酢を加えるのは、グルテンを軟化させ生地をのばしやすくするためです。りんご酢を使用していますが、ワインビネガーや穀物酢などでもかまいません。
4 ひとまとまりになったら、ラップに包んで四角に形を整え、冷蔵庫で一晩休ませる。
② バター生地を作る
・バターを冷蔵庫で冷やしておく。
・準強力粉をふるっておく。
5 バターをラップで包み、めん棒でたたいて柔らかくする。
6 ボールにバターと準強力粉を入れ、カードで切るように混ぜ合わせる。
*折り込み用のバターに小麦粉を混ぜることで、バターの伸びが良くなり、生地をのばす際に割れにくくなります。
7 ある程度混ざったらゴムベラに持ち替え、ボールに押さえつけるようにしてしっかりと混ぜる。
8 保存袋に入れ、袋の角を利用して15cm角くらいに成形し、冷蔵庫で一晩休ませる。
③ クレームダマンドを作る
・粉糖をふるっておく。
・Dの材料を合わせふるっておく。
・バターを湯せんまたは電子レンジで加熱し、マヨネーズぐらいの固さにしておく。
・ベーキングペーパーに直径15cmの型をのせ、ペンで型をなぞってガイドシートを作っておく。
クレームダマンドを失敗させないコツは、卵とバターをしっかりと乳化させることです。卵は冷えていると分離しやすくなるため、必ず30℃程度まで温めてください。また、バターはマヨネーズぐらいの固さまで柔らかくしてからスタートすると乳化しやすくなります。
9 ボールにバターを入れ、泡立て器で混ぜる。
10 粉糖を加え混ぜ合わせる。
11 バニラオイル、サワークリームを加え混ぜ合わせる。
12 Cの材料を合わせ、湯せんにかけて30℃くらいに温める。
13 12を5回に分けて加え、その都度よく混ぜ合わせる。
14 Dの材料を加え混ぜ合わせる。
15 ラム酒を加え混ぜ合わせる。
16 絞り袋にクリームを入れ、準備しておいたガイドシートの円の中央から外にむかって、円の内側1cmの辺りまで渦巻き状に絞る。余ったクリームは中心部分に絞り、中心部分が少し高くなるようにする。
17 フェーブを埋め、パレットナイフで表面をならしてディスク状に形を整える。
*誤飲が心配な場合は、フェーブの代わりにアーモンドなどを入れてください。
18 冷蔵庫に入れ、冷やし固める。
*クレームダマンドを冷蔵庫でしっかりと冷やし固めることで、このあとの成形の作業がしやすくなります。
2日目
2日目はデトランプでバター生地を包み、3つ折り2回と4つ折り1回までの作業を行います。
④ デトランプでバター生地を包む
19 台に打ち粉(強力粉)をふってデトランプを置き、上からも打ち粉をふる。
20 デトランプの表面をめん棒でたたく。生地の端の部分がとくに割れやすいので、生地を立て側面も軽くたたく。
21 めん棒でデトランプをのばし、バター生地の2倍の長さにする。
22 デトランプの上にバター生地をのせ、上下の生地を合わせる。
23 デトランプの両サイドをつまんでとじる。
⑤ 折り込み作業
24 [3つ折り1回目]台に打ち粉をふって生地を90度回転させて置き、めん棒全体に押し当てバターと生地をなじませる。
25 めん棒を上下、左右に動かし、3つ折りにしたときに正方形の大きさになるまで生地をのばす。
26 手前の生地1/3を折り、めん棒を軽く転がし生地を密着させる。残りの生地を上から重ね、同じようにめん棒を軽く転がし生地を密着させる。
27 [3つ折り2回目] 生地を90度回転させ、3つ折り1回目の作業を繰り返す。
28 折り返し部分をナイフでカットする。
29 生地をラップで包み、冷蔵庫で2時間~半日程度休ませる。
30 [4つ折り1回目] 生地を90度回転(カットした部分が左右になるように)させ、4つ折りにしたときに正方形の大きさになるまで生地をのばす。
31 生地を半分に折って中央に軽く線をつける。上下の生地を中央の線に向かって折り、さらに半分に折って4つ折りにする。
32 めん棒を軽く転がし生地を密着させ、折り返し部分をナイフでカットする。
33 生地をラップで包み、冷蔵庫で2時間~半日程度休ませる。
3日目
3日目は、最後の折り込み作業となる4つ折り2回目を行い、成形、レイエ、焼成の工程へと進みます。
⑥ 折り込み作業つづき
34 [4つ折り2回目] 4つ折り1回目の作業を繰り返し、冷蔵庫で2時間休ませる。
⑦ 成形
・塗り卵用の卵黄を茶こしで濾しておく。
35 生地を横幅22cm、厚さ2mmにのばし、半分にカットする。
36 ラップで包み、冷蔵庫で30分休ませる。
37 ベーキングペーパーの上に生地を置き、直径18cmの型を軽く押さえて跡をつける。
38 型で跡をつけた部分に、刷毛で接着用の水(分量外)を塗る。
39 生地の上に冷やしておいたクレームダマンドを置き、もう1枚の生地を90度向きを変えて被せる。
40 クレームダマンドの縁に沿って指先で生地を押さえながら上下の生地を密着させる。
*生地を引っ張りながら密着させると焼成時に縮むため、引っ張らないように気をつけてください。
41 竹串で表面にピケを入れる。
42 ラップを被せて、冷蔵庫で30分休ませる。
43 直径18cmの型を生地にのせ、ナイフを型に沿わせて型より一回り大きくなるようカットする。
*パイ生地を潰さないよう、よく切れるカッターナイフのような刃の薄いナイフがおすすめです。
44 生地の上下を返し、刷毛で卵黄をムラにならないよう薄く塗る。冷蔵庫に入れ、表面に塗った卵を乾燥させる。
*生地の上下を返すことで表面がフラットになり、レイエの作業がしやすくなります。
45 触っても手につかない程度になったら冷蔵庫から取り出し、もう一度薄く卵黄を塗る。
⑧ レイエ
ガレット・デ・ロワの表面に描かれた模様を「レイエ」といいます。レイエには4つの基本モチーフがあり、渦巻き模様の「太陽」は生命力、葉っぱ模様の「月桂樹」は勝利、矢羽根模様の「麦の穂」は豊穣、格子模様の「ひまわり」は栄光を表しています。
46[レイエ|太陽] 生地をベーキングペーパーごと回転台の上にのせ、回転台を回しながらナイフで縁より1.5cm内側に円を描く。
47 生地をベーキングペーパーごと回転台から下ろし台の上におく。
*ここから先のレイエの作業は台の上で行いますが、回転台にのせたままのほうかやりやすければそのままのせて行ってください。
48 生地の中心に竹串で印をつける。ベーキングペーパーを回しながら、生地の中心から45で描いた円にむけて等間隔で曲線を描く。
49 45で描いた円の外側に、内側の線とは逆方向に斜線で模様を描く。
50 ナイフで中心と数か所ピケをする。
新年になるとシェフのお店に並ぶガレット・デ・ロワのレイエは「月桂樹」。今回は特別に月桂樹のレイエも見せていただきました。
⑨ 焼成
・オーブンを190~200℃に温めておく。
*焼き時間・温度はお使いのオーブンによって調節してください。
51 天板の上に生地をのせ、190~200℃に温めたオーブンで20分焼き、180℃に下げてさらに30分焼く。
52 一旦オーブンから取り出し、表面に粉糖を振りかけ、220℃に上げたオーブンで5分程度焼く。
バターをたっぷりと使ったサクサクのパイ生地とアーモンドの風味豊かなクレームダマンド。ガレット・デ・ロワの美味しさを改めて気づかせてくれる「シェフのガレット・デ・ロワ」。また、ガレット・デ・ロワには、フイユタージュ、クレームダマンド、レイエと、洋菓子の基礎が詰まっています。シェフのアドバイスを参考に、ご家庭でもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
パティスリー ミラヴェイユ オーナーシェフ
妻鹿 祐介 氏 Yusuke Mega
製菓学校を卒業後、関西の洋菓子店での勤務、フランスロレーヌ地方のショコラトリー「Franck Kestener」での修行を経て、2011年兵庫県宝塚市に「パティスリー ミラヴェイユ」をオープン。2018年には、第16回ガレット・デ・ロワ コンテスト3位入賞の実績をもつ。
Patisserie Miraveille兵庫県宝塚市伊孑志3-12-23
公式HP:http://miraveille.com/
Instagram:https://www.instagram.com/miraveille/