チョコレートの種類と特徴|原料となるカカオとは?製法や分類についても解説
口の中に入れるとスッと溶け、広がるカカオの芳醇な香り。世界の人々を魅了するチョコレートは、お菓子作りにも欠かせない材料のひとつです。しかし、種類が多く、どれを選べばよいか迷ったことはありませんか?ここでは、原料となるカカオ豆の特徴から製造工程、さらには各種チョコレートの特性まで詳しくご紹介します。
カカオ豆からチョコレートへ
ギリシャ語で「テオブロマ・カカオ~神々の食べ物~」という意味を持つカカオ。このカカオから、私たちを魅了するチョコレートは作られます。まずはチョコレートの主原料となるカカオの特徴と、カカオ豆からチョコレートが作られるまでの製造工程について解説します。
カカオとは
カカオは幹に直接花が咲き、実がなる幹生果(かんせいか)で、赤道を中心に南北緯度20度の範囲に広がる「カカオベルト」と呼ばれる熱帯のごく限られた地域に生育しています。カカオポッドと呼ばれる果実は、収穫時には長さ約15~20cmのラグビーボールのような形に成長し、中には白い果肉に包まれた20~40粒ほどの種子(カカオ豆)が入っています。
チョコレートの製造工程
収穫されたカカオポッドは、殻を割って中に入っているカカオ豆を果肉ごと取り出し、バナナの葉などで覆って発酵させます。発酵させることによって、カカオ豆はチョコレート色へと変化し、チョコレートの香りの素となる特有の香りを放つようになります。そして、乾燥を終えたカカオ豆は、生産国から世界各国のチョコレート工場へ送られます。
チョコレート工場での工程
- 1 焙焼(ロースト)
100~140℃の熱を加えて焙焼し、カカオ豆特有の香りと風味を引き出します。 - 2 分離
焙焼したカカオ豆を粗く砕いて、外皮や胚芽を取り除きます。残った胚乳部分が「カカオニブ」です。 - 3 磨砕
カカオニブをペースト状になるまですり潰します。このペーストがチョコレートの主原料となる「カカオマス」です。
※カカオマスを圧搾するとココアバター(油分)とココアケーキ(個体)に分離し、ココアケーキを粉砕したものがココアパウダーになります。 - 4 混合
カカオマスに砂糖・粉乳・ココアバターなどを混合します。この配合比率によって、チョコレートの種類が決まります。 - 5 微粉砕(リファイニング)
舌ざわりが滑らかなチョコレートにするために、20ミクロン程度まで微粉砕します。 - 6 精錬(コンチング)
コンチェという撹拌械でチョコレートを長時間練り上げます。不要な酸味が抜け、チョコレート特有の香りと滑らかさが生まれます。 - 7 調温(テンパリング)
チョコレートの温度を調節し、ココアバターを最も安定した結晶構造に誘導します。 - 8 成形
テンパリングしたチョコレートを型に流し、冷却して固めます。
チョコレートの種類
チョコレートを構成する主な原料は、カカオマス、ココアバター、砂糖、ミルク(粉乳)の4つ。これらをどのように配合するのかによって、チョコレートの種類が決まります。
- カカオマス
チョコレートの味や香りのもとになるチョコレートの主原料で、ココアバターを55%程度含んでいます。 - ココアバター
カカオ豆に含まれている油脂で、カカオバターとも呼ばれています。チョコレートの口溶けの良さは、ココアバターの体温よりもやや低い温度で急速に溶け始める性質によるものです。 - 砂糖
カカオの苦みや渋みをやわらげ、チョコレートを食べやすくします。 - ミルク(粉乳)
牛乳などの液体ではなく、粉乳を使用します。マイルドでまろやかな味わいになります。
スイートチョコレート
カカオマス+ココアバター+砂糖
カカオの風味が強く、チョコレートの個性(酸味や苦みや香り)を楽しむことができます。カカオ分が高くなるほど砂糖が少なくなるので、よりビターな味わいになります。
※ダークチョコレートやビターチョコレートとも呼ばれています。
ミルクチョコレート
カカオマス+ココアバター+砂糖+ミルク(粉乳)
乳製品が含まれるため、カカオ分はスイートチョコレートより低く、苦味は弱め、色合いは淡くなります。カカオの風味とミルクのコク、まろやかな味わいをバランスよく楽しめる、幅広い世代に人気のチョコレートです。
ホワイトチョコレート
ココアバター+砂糖+ミルク(粉乳)
カカオマスが入っていないため色は白く、甘味が強いのが特長です。濃厚でミルクの風味豊かなチョコレートは単独での使用はもちろん、いちごや抹茶、紅茶などのパウダーと合わせて使うこともできます。
カカオ分って何?
チョコレートのパッケージにある「カカオ分〇%」とは、チョコレート全体に占めるカカオ由来成分(カカオマスやココアバターなど)の割合を示しています。例えば、カカオ分70%のチョコレートであれば、全体の70%がカカオ由来成分ということになります。ただし、同じカカオ分70%のチョコレートであっても、カカオマスとココアバターの配合が異なると、味わいや口溶けが違ってくるため注意が必要です。
チョコレートの分類
日本のチョコレートは全国チョコレート業公正取引協議会が定める「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」により、チョコレートと準チョコレートに分類されます。
(※2)脂肪分には、ココアバターと乳脂肪を含みます。
https://www.chocokoutori.org/cont3/13.html
チョコレート
カカオ分が35%以上(うちココアバター18%以上)、あるいはカカオ分21%以上(うちココアバター18%以上)でカカオ分と乳固形分の合計が35%以上のチョコレート生地を全重量の60%以上使用したもの。
準チョコレート
カカオ分が15%以上(うちココアバター3%以上)、あるいはカカオ分7%(うちココアバター3%以上)以上かつ乳固形分12.5%以上で、いずれの場合も脂肪分18%以上の準チョコレート生地を全重量の60%以上使用したもの。
純チョコレートって何?
純チョコレートとは、ココアバター代用脂の使用禁止、糖類はショ糖のみで使用量は全重量の55%以下、レシチンとバニラ系香料以外の添加物は使用できないなど、チョコレートの規格にさらに厳しい条件を追加したものです。そして、これらの条件をクリアしたチョコレートのみが「純チョコレート(純良チョコレート)」や「ピュアチョコレート」と表示することができます。読み方が同じ「準チョコレート」と混同しやすいので注意しましょう。
クーベルチュールチョコレートとは
クーベルチュールとは、国際規格(CODEX)によって、ココアバター31%以上、非脂肪カカオ分(固形分)2.5%以上、総カカオ分35%以上と定められていて、おもに製菓用のチョコレートとして使われています。形状は、削って使う板状タイプのほか、コイン形やフレークタイプなどがあります。
クーベルチュールと板チョコとの違いは?
クーベルチュールはココアバターの含有量が多く、溶かすと流動性が高いのが特徴です。クーベルチュールとはフランス語で「覆う」という意味があり、その名の通り、ボンボンショコラなどチョコレートで薄くコーティングするお菓子に使用されます。一方の板チョコは、流通しやすい価格とそのまま食べることを前提として作られているため、ココアバターの含有量が低く、パーム油などの植物油脂が添加されている場合があります。そのため、溶かすと粘度が高くなり、薄くコーティングするのには適していません。
クーベルチュール | 一般的な板チョコ | |
ココアバター含有量 | 多い | 少ない |
流動性 | 高い | 低い |
カカオの風味 | 強い | 弱い |
価格 | 高い | 安い |
用途 | ボンボンショコラなどお菓子作り全般 | そのまま食べる |
テンパリングの必要性
チョコレートに含まれるココアバターは複数の異なる結晶形を持つため、単純に溶かして固めただけでは不安定な結晶が残り、美味しいチョコレートにはなりません。そこで、溶かしたチョコレートを適切な温度管理のもと安定した結晶形に揃える「テンパリング」という作業が必要になります。テンパリングを行うことで、光沢があり、口どけの良いチョコレートを作ることができます。
チョコレートの保存方法
チョコレートは温度変化と湿気を嫌うため、直射日光を避け、涼しく乾燥した場所で25℃以下(最適温度は16~18℃)を目安に保存してください。夏場は冷蔵庫の野菜室で保存し、他の食材の匂いがうつらないよう密封容器などに入れてください。
ブルーム現象って何?
ブルームとは、保管やテンパリングが適切に行われなかった場合、チョコレートの表面に白い粉が浮いたり層状になったりする現象です。ブルームが起こっても食べることはできますが、チョコレート本来の光沢が失われ、食感や風味も低下するので注意が必要です。ブルームにはファットブルームとシュガーブルームの2種類があります。
ファットブルーム
チョコレートが正しい温度で固まらなかった場合に起こりやすく、表面が白く曇ったような状態になります。不適切な温度管理やテンパリング不足により、ココアバターの結晶が表面に移動して粗大化することで発生します。
シュガーブルーム
温度変化によってチョコレートの表面に結露が生じ、その水分によって砂糖が溶解した後、再結晶化することによって発生します。冷蔵庫で保存したチョコレートを室温に戻す際など、急激な温度変化にさらされた場合に起こりやすくなります。
チョコレート関連商品
テンパリングなしで使えるコーティングチョコレートや生地に混ぜ込んで使うチョコチップなど、チョコレート関連商品をご紹介します。
おすすめのチョコレートブランド
プロフーズで取り扱いのあるチョコレートブランド、チョコレートメーカーを集めました。パティシエ・ショコラティエに選ばれるチョコレートのなかから、お好みのチョコレートを探してみてはいかがでしょか。